深炒りコーヒー
2009年 02月 12日
大学1年の冬、大学のオーケストラでピアノ・コンチェルトの伴奏をした。ベートーベンの4番のピアノコンチェルト。ピアノ・コンチェルトの伴奏をするのはこれが初めてだった。何回か練習を重ねるうちに、叙情的なこの曲が大好きになった。
練習の休憩時間に友達に誘われて近くの喫茶店に行った。仙台の冬は寒い。凍てつく屋外から中に入り、人心地ついてから、カフェ・オー・レを頼んだ。一口飲んで、その美味しさに驚いた。それまでもカフェ・オー・レを飲んだことはあったけど、まるで違う。これが本物のカフェ・オー・レか。
喫茶店の名前はプロコプ。(パリのカルチェ・ラタンの有名なカフェからその名をとったのだろう。)学生だったから喫茶店でしょっちゅうコーヒーを飲むようなお金はなかった。でも、時々、プロコプまでコーヒー豆を買いに来た。すぐ油が出てきてでベトベトになってしまうような深炒りのコーヒー豆だった。
そして、濃い深炒りコーヒーにミルクをたくさん入れて飲むのが、私の好みのスタイルになった。いまだにこの好みは変わっていない。深炒りじゃないときや、薄いときにはブラックで飲む。アメリカではミルクを入れたコーヒーをブラックに対してライトという。街中では概して薄いコーヒーが多いので、私はライトではなくブラックにする。スターバックスのカフェ・ラテは私の好みだ。ミルクをあわ立てたカプチーノより、カフェ・ラテの方がいい。
日本ではコーヒーにクリームを入れるが、私はクリームなら入れないほうがいい。アメリカやヨーロッパではコーヒーには必ずミルクが付くのに、どうして日本はクリームなのだろう。日本では「コーヒーにミルクをお付けしますか?」と聞いて来ても付いてくるのはクリームだ。私はいつも「牛乳を付けてください」と言う。クリームとミルクでは味が違うのだ。
ここではよく、ゼイバーズのフレンチ・イタリアンを買ってくる。
今でも時々、あの凍てつく仙台の夜と、ベートーベンの4番のピアノ・コンチェルトと、そしてプロコプのカフェ・オー・レをセットで思い出す。あのとき、まだ18才だった。