ニューヨークでしか買えない物
2009年 03月 22日
Salchowをインターネットで調べてみると、Bow Maker(弓のメーカー)で住所はマンハッタンのミッドタウン、カーネギーホールの近くになっている。オーケストラの練習のときにチェロのロンに聞いてみたら、「ビル(William Salchow)のことならよく知ってる。彼の弓は高いぞ、6000ドル以上はする」、などといろいろ教えてくれ、他にも楽器屋さんを紹介してくれた。
はるばる日本からやってきたMさんと2人でSalchowの店に行ってみた。古いビルの12階、曲がりくねった廊下を歩いて行くと、ドアの1つに"SALCHOW & SONS BOWMAKERS"のプレートが貼ってあった。ドアを開けると、中は広い工房になっていて、何人かの人が働いていた。
受付近くに座っていた長身の男性が応対してくれた。「松脂が欲しい」、と言うと1ダース入りの箱を棚から出してきた。Mさんは早速布の包みを開けて中を見ている。「Light colorのはありませんか?」、Mさんは色の薄いものを欲しがっている。別の箱を出してくれたが、これもダーク・カラー。担当の男性はダークもライトも同じだと言う。Mさんは全然違うと言う。
もう1箱出してくれたのは何とハート型をしていた。これは、色が薄かった。「これだ、これ」。担当の男性に「彼女はこれを買うために日本から来た」と言うと、ニコニコっとした。「日本にはダークカラーのものばかり、毎年いっぱい送っている。日本のバイヤーはダークを欲しがる」。それだからだったのだ。ライトは日本では売られていないのだ。
「あなたはビルの息子?」と聞いてみたら、「そうだ、スティーブだ」。
「チェリストのロン・サンダースを知っている?」、「多分知っていると思う」、「彼がここを紹介してくれたの」。ちょっと違うけど、一応使えるものは使っておく。
ハート型の松脂の中にも少し色の濃いのが混ざっている。彼女は一つ一つ布の包みを開けてライトをより分けていた。スティーブは「1箱買ってくれるなら半額にする」。1つ10ドルで、12個120ドルのところ、60ドル。「買って行って皆に安く売ったら?」と勧めたが、彼女は「ダークはいらない」と言ってライト3個と少し色の濃いもの1個合わせて4個買った。私も1個ライトを買ってみた。この松脂は実際にここでホーム・メイドで作っているとのこと。メーカー側は色には全くこだわってないようだが、実際に使っている人がこれほど違うと言っているのだから、違うのだろう。色の違いは材料の違いによるだろうか。
Mさんはライトの音は明るく輝かしい感じ、ダークは音は出しやすいのだが重く暗くなる、そのような、奥深いことを言っていた。
Salchowサルコーの松脂のライト。
まさにニューヨークでしか買えない、
Made in NYのお土産だった。